「カジノへのデメリットの研究が十分でない」「ギャンブル依存症が海外の3倍」な日本で、カジノ法案を通していいのだろうか?

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「カジノへのデメリットの研究が十分でない」「ギャンブル依存症が海外の3倍」な日本で、カジノ法案を通していいのだろうか?

 

カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法案、「統合型リゾート実施法案」が、7月20日の参院本会議で成立しました。

多くの国民からの賛同が得られてないにもかかわらず、強行採決されたこの法案。野党側は依存症対策などが不十分だと批判し、衆院内閣委で50時間の審議を求めましたが、与党が応じず、結局18時間10分の審議時間で可決されています。

 

カジノ法案に対しては、国民からの反対の声が多い

カジノ法案に対しては反対の声のほうが多く、事実各種世論調査を見ても、おおむね6割から7割の人びとが反対するものに。

下は朝日新聞による世論調査ですが、他の調査においてもおおむね6~7割が反対する傾向がみられます。

・カジノ法案、今国会で成立させるべきか

成立させるべきだ…17%

その必要はない…76%

 

この世論調査の声が一端を示す通り、国民の「カジノを含む統合型リゾート」に対するイメージはよくありません。

事実、日本リサーチセンター(東京中央区)が実施した時系列調査「カジノ整備に対する主なイメージ」では、軒並み、カジノ等に対するマイナスイメージを示すものが並んでいます。

 

・カジノを含む統合型リゾートに対するイメージ

ギャンブル依存症の人が増える…61.0%

治安が悪化する…45.4%

犯罪が増加する…43.6%

青少年の成長に悪影響を与える…38.5%

散財をする人が増える…34.1%

(2017年1月調査)

 

【ポイント】

・カジノなどIR導入に対しては、反対の声のほうが多い

・特に「ギャンブル依存症の増加」「治安の悪化」「犯罪の増加」などが懸念されている

 

 

日本では、「カジノに対するデメリット」に関する研究が十分になされていない

カジノなどIRを導入することでのメリットとして、政府は以下のものを掲げます。

・カジノないしIR導入でのメリット

①:税収の増加

②:雇用の創出

③:外国人観光客の誘致

④:総合しての経済効果

 

確かに、GDPや雇用、観光など経済効果としてはIR政策は有効なのかもしれません。実際、計量研究もそれをサポートしています。

・オックスフォード・エコノミクスによる、IRの経済効果

直接効果
東京圏 大阪圏
GDP 1兆1730億円 8180億円
粗付加価値 7,720億円 5100億円
雇用件数 34,507件 26,147件
個人所得 1990億円 1460億円
間接効果および二次波及効果
GDP 1兆690億円 8040億円
粗付加価値 5790億円 4350億円
雇用件数 68,324件 51,449件
個人所得 2540億円 1910億円

 

・国民の「不安」に答えていないカジノ案

しかしながら、国民の多くが懸念している「ギャンブル依存症患者の増加」「犯罪の増加」「治安の悪化」といった面における適切な検証が行われていないのもまた事実。例えば、みずほ銀行 産業調査部は次のようにレポートします。

我が国におけるカジノ導入の議論では、経済波及効果、雇用創出効果や新規財源の創出といったその導入効果の高さについては定量的に把握することが試みられている。

一方、弊害については一転してギャンブル依存症への対策が必要といった定性的な見解、諸外国におけるギャンブル依存症対策事例などの紹介にとどまり、比較考量を十分に行う材料を欠くきらいがある。(…中略)

諸外国ではこのようにギャンブルの弊害に対する認知・研究が進むのに対し、わが国では(…中略)疾病としての社会的認知・影響把握は十分に行われてきたとは言えない。

 

同様に北海道立精神保健福祉センター所長の田辺等氏も、日本において、ギャンブル問題の研究が進んでいないことを訴えています。

・田辺氏作成のスライドより

出典:田辺等「我が国に蔓延する「ギャンブル依存症」の現状」

 

・他国における、ギャンブル依存のマイナス効果の研究例

なおギャンブル依存症患者に対する、他国の研究例としては次のものがあげられます。

アメリカ・・・社会的コストが年間50億ドル(約5500億円)、生涯コストが400億ドル(4兆4000億円)

※国家ゲーミング影響度調査委員会調べ

韓国・・・ギャンブル産業の売り上げ16.5兆ウォン(約1兆6400億円)に対し、家庭崩壊や労働意欲の低下で社会全体で、60兆ウォン(約5兆9000億円)の損失

※2011年11月27日朝日新聞報道

 

加えて他国では、カジノに対するマイナス影響を最小限にするために、次のような対策がとられています。

・各国でのギャンブル対策

・職員教育プログラム(アメリカほか)

・自己/家族/強制排除プログラム(シン
ガポールなど)

・自国民に対する与信行為の禁止、ATM設置禁止(シンガポール)

・自発的ロスリミットなどの設定(シンガポール、オーストラリア)

・入場料制度(シンガポール、韓国)

・国内でのカジノ関連広告規制(シンガポール)

・依存症対応教育の徹底義務(アメリカなど)

・専門的治療プログラムの提供(アメリカ)

 

【ポイント】

・確かに、カジノなどIRの経済面でのプラス効果はある

・しかしながら、大多数の国民が不安に思う「ギャンブル依存問題」への研究が日本では進んでおらず、カジノが建設された場合、どこまでマイナス面の影響が起こるのかは不明

 

・背景に自己責任

日本ではギャンブル依存所につちえの研究が進んでいない、背景には、ギャンブルでの依存症に対して、日本社会全体が冷淡であることがあげられます。

それは例えば、日本における代表的なギャンブル依存症者「パチンコ中毒者」に対し、世間から向けられる視線が最たるもの。

先述のみずほ銀行 産業調査部は、次のように記しています。

諸外国ではギャンブルの弊害に対する認知・研究が進むのに対し、わが国ではギャンブル依存症による弊害はあくまで「自己責任」とみなされることが多く、疾病としての社会的認知・影響把握は十分に行われてきたとは言えない。

 

そもそも日本は、ギャンブル依存症患者の疾患率が他国に比べて高い

そもそも日本は、すでに他国に比べてギャンブル依存症が多いもの。

2017年に厚生労働省が全国4685人に実施した面接調査のデータによれば、推計で約320万人がギャンブル依存症という結果でした。有病率は3.6%となっており、この数字は他国と比べると突出して高いものとなっています。

・世界各国のギャンブル依存症有病率

調査年 調査数(人) 生涯有病率
アメリカ(ルイジアナ州) 2002 1353 1.58
オーストラリア 2001 27万6777 男性 2.4 女性1.7
カナダ 2002 4603 0.9
韓国 2006 5333 0.8
スウェーデン 1997 7139 0.6
ニュージーランド 2000 1029 0.8
フランス 2008 529 1.24
香港 2001 2004 1.8
日本 2008 4123 男性 9.6 女性1.6
2013 4153 男性 8.8 女性1.8 全体 4.8%
2017 4685 男性 6.7 女性 0.6 全体 3.6%

 

世界にもまして、ギャンブル依存症者が多い国、日本。現状の問題をまったく解決せずに、新しいギャンブル依存症を増やす場所をつくるというのは、政策として完全におかしいのではないでしょうか。

 

【参考資料】

・カジノを含むIR開業までの道のり

出典:毎日新聞「カジノ法成立 施設の具体像示さず 政府、準備作業本格化」2018年7月20日

 

・世界のカジノ市場規模(2010年)

アメリカ 574億8800万ドル
アジア 342億8000万ドル
ヨーロッパ・中東・アフリカ 163億700万ドル
カナダ 57億400万ドル
ラテンアメリカ 38億000万ドル
1175億7900万ドル

出典:PricewaterhouseCoopers LLP “Global Gaming Outlook 2011”

 

参考文献

朝日新聞デジタル「カジノ法案の採決を強行 与党など、衆院内閣委で」2018年6月15日

Oxford Economics (2015). Beyond 2020: Tourism Growth and the Economic Impact of Integrated Resorts in Japan.

Pricewater house Coopers LLP (2011).  Global Gaming Outlook 2011.

みずほ銀行 産業調査部「特集:日本産業の中期展望-日本産業が輝きを取り戻すための有望分野を探る-」2012年5月7日

日本リサーチセンター『「カジノを含む統合型リゾート」についての世論調査』

毎日新聞「カジノ法成立 施設の具体像示さず 政府、準備作業本格化」2018年7月20日

田辺等「我が国に蔓延する「ギャンブル依存症」の現状」

日本経済新聞「ギャンブル依存症疑い320万人 厚労省推計、諸外国と比べ高く 」2017年9月29日

しんぶん赤旗「ギャンブル依存症536万人 カジノ合法化に警告」2014年8月25日

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