中国でも問題になる「まとめサイト(今日頭条)」と、マスコミの「権力」

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中国でも問題になる「まとめサイト(今日頭条)」と、マスコミの「権力」

・「今日頭条」

 

何かと世間を騒がせる「まとめニュースサイト」。悪質なデマ、恣意的な編集や不正確な情報の流布、特定の人々への憎悪を促すような扇動的な内容など、その被害はとどまるところを知らない。

そんな「まとめニュースサイト」だが、なにも問題となっているのは日本だけの話ではない。先日、中国規制当局は「今日頭条」など4種のまとめニュースアプリに対し、アプリストアでの配信停止を命令した。停止期間は「今日頭条」が最も長く3週間。以下「鳳凰新聞」が2週間、「網易新聞」が1週間、「天天快報」が3日間だった。停止に至った理由は「その低俗で陳腐な内容が、人々の気分を害している」からだという。

 

・「今日頭条」とは何か

北京の企業、バイトダンス・テクノロジーズ(北京字節跳動科技)が展開する「今日頭条」は、現在、中国で最も人気のあるアプリの一つに挙げられる。

このアプリは言わば「中国版Naverまとめ」。ニュース出稿者には「中央電視台」や「新華社通信」など一般の国営通信社もあるが、その多くは「頭条号」と呼ばれる一般ユーザーで、その数実に39万アカウントを超える。そしてNaverまとめ同様、各々のユーザーが好きなように情報をキュレーションし発信している。

「ユーザーが関心のある情報だけ(を届ける)」の謳い文句通り、アプリを開くと、前もって登録しておいたたキーワードに関するニュースがどんどん入ってくる利便性とコンテンツの豊富さが受け(この辺りはgunosyなどニュースキュレーションアプリに似ている)、アクティブユーザー数は1億5000万人を超えた(2016年)。さらにはYouTubeのような動画コンテンツ機能、ツイキャスのようなライブストリーミング配信機能も人気であり、正にさまざまな人気サイトの良いとこ取りとなっている。

 

・中国共産党は何を恐れているのか

もちろん共産党の公式見解のように、これらサイトに低俗な情報が多いことは確かである。不正確なデマ情報やトンデモ論に近い話も多い。

しかし何よりも「ユーザ-の好みに応じた情報だけを提供する」という、サイトの技術特性への恐怖心が大きいようだ。たとえ党への批判的な内容ではないとしても、党の見解とは異なるニュースやエンタメ情報に人びとが夢中になることは看過できないらしい。

実際、今日頭条のようなサイトにおいて、習国家主席のニュースはさほど注目されていない。政治よりも、娯楽や美容・健康といった事柄に注目が集まるのは古今東西おなじみの情景だが、それはかの国においても変わらないようだ。

 

・メディア・マスコミの持つ影響力と権力性

共産党は恐れすぎなのだろうか。

とはいえ、その思考回路は理解できないものでもない。メディアの影響力というものは計り知れず、何が起こるかわからないからだ。例えば1960年代、ベトナム戦争への反対運動が盛んになったのは、米政府が各メディア・ジャーナリストへの現地報道を奨励した結果、生々しい死体の様子がテレビでそのまま映し出されたためだ。

だから例え娯楽ニュースだとしても、何かのはずみで政府転覆につながるような事態が起こるかもしれない。そういえば、2010年から起きたアラブ世界での民主化運動「アラブの春」においては、ソーシャルメディアが大きな役割を果たしたのは記憶に新しい。

メディアの影響力は甚大だから、その力は時として邪悪な方向にも用いられる。90年代のボスニア内戦においてはスロベニア・クロアチアの資本家が民族主義を促すテレビCMを流し、人びとの民族意識と内戦の正当性を煽った。この内戦のルーツの一つには地域格差があり、クロアチアなど裕福な地域の資本家は貧しい地域のために高額の税金を支払うのを嫌ったのだ。

同じく1991年の湾岸戦争においては、大手広告代理店がイラク兵の新生児虐殺やイラク軍による環境破壊(油まみれの水鳥)をでっち上げ、アメリカ世論の戦争支持を取り付けた。

そう考えると、時代の寵児がメディア媒体を傘下に置こうとする理由も良くわかる。Amazonのジェフ・ベゾスは米名門紙の「ワシントンポスト」を買収し、アリババのジャック・マーは香港の有力英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」を買収した。