千葉県一のブラジル人団地「村上団地」を訪ねる。公団住宅に移民が多く集まるのはなぜか

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千葉県一のブラジル人団地にて、ブラジルの食文化と日本の住宅政策に触れる~千葉県八千代市 村上団地~

 

千葉県八千代市と工業団地

今回は千葉県八千代市にやってきました。

船橋市・千葉市といった都市を擁する「京葉工業地域」に隣接し、工業団地が居並ぶこの街は、日本を代表する内陸工業都市。

よって市内のあちこちにおいては、大工場を見かけることができます。

・八千代市の工場地域

そんな八千代市では、1990年代中ごろから外国人労働者が増えてきました。

これは不足する工場労働者を補うため、日本政府が1990年に「出入国管理及び難民認定法(いわゆる入管法)」を改正したことによるもの。この法改正により、日系人3世までが日本国内において難なく就労できるようになりました。

政府の本音としては、本格的な移民解禁を行いたいんでしょうが、そうならず日系人にだけ就労許可が下りるあたり、日本国内の「事情」が見え隠れします。

 

公団住宅に移民が多く集まるのはなぜか。歪んだ住宅政策の結末

それはさておき、今回訪れたのは八千代市内にある公団住宅「村上団地」。実はこの村上団地、移民のメッカとして知られており、千葉県に居住する約3000人のブラジル系住民においてこの団地だけで約280人が、一方のペルー系住民も同2600人中160人ほどが住んでいます。

・村上団地に居住する外国系住民の数(2014年のデータ)

ブラジル人系住民:280人 (千葉県内に居住するブラジル系住民は約3000人)

ペルー系住民:160人 (千葉県内に居住するペルー系住民は約2600人)

 

千葉県内のブラジル人、約10人に1人がこの団地に住んでいるというのは不思議なことですが、実はこのような光景 (外国系住民の方の公団住宅への集中) は、全国各地でみられることなんです。

 

・実は日本はかつて賃貸住宅国家だった

日本という国はそもそもにおいて連帯保証人や収入証明など民間賃貸住宅を借りる際のハードルが高いもの。そこに戦前・1939年に施行され、家賃の上限を決める「家賃統制令」と1941年に改正された「借地借家法」が加わります。そもそも経済的に貧しい弱者のために作られたこれらの法は、確かにすでに借りている弱者へは救済につながったのですが、あまりに弱者優位な状況となったため、大家側が新規の賃貸を行わないことにつながります。

その結果として賃貸住宅難に繋がり、1941年8割近くを占めていた賃貸住宅比率(旧厚生省調査)も、その後急激に低下し現在では35%ほど(総務省調査)に低下。しかも住民のほとんどが学生や若い新婚層など、短期間での移住が前提である住民に占められるようになってしまいました。

これら状況から、現在でも移民などマイノリティ―の方々が民間住宅で賃貸契約を行うことは難しく、そのため、数少ない借りられる賃貸住宅 (数か月分の家賃を出せば基本的にどんな人でも借りることができる)として、公団住宅に移民が集まってくることになります。

 

村上団地の商店街を訪ねる

さて住民以外の一般市民にも開かれている、公団内の商店街を尋ねてみました。

訪れると、多数のブラジル人・ペルー人らしき住民の方の姿を見かけました。敷地内を歩いていると、どこかからポルトガル語の声が聞こえてきます。

・掲示板にもポルトガル語

ポルトガル語が賑やかなこの団地も、2009年のリーマンショックを受け、ブラジル・ペルー両国の居住者は減少傾向にあるとのこと。数年前までは、800人ほどのブラジル人がこの団地に居住していたそう。一方で日本人高齢者の方も多く見かけ、「外国人労働者と当初から住む高齢市民の住民の2極化」という、日本の将来の縮図が垣間見えることも。

そう日本の縮図といえば、村上団地商店街の25のテナントにおいて、現在も営業中なのは8店舗ほどでした。商店街が苦境にあるのは、この団地においても同じようです。

・村上団地内の商店街

公団内のブラジルショップ「モンテヤマザキ」さん。

・「モンテ ヤマザキ」外観

10畳ほどの広さの店内には、野菜・飲み物・菓子・主食系穀物・豆類・調味料など、見たこともないさまざまなものが売られていました。

店内については、今は撮影NGとのことで撮っていません。

・「モンテ ヤマザキ」で買ったもの

①:トウモロコシのスナック菓子

牛肉・豚肉・大豆とならんでブラジルを代表する農畜産物と言えばトウモロコシ。というわけで、トウモロコシのスナック菓子。トウモロコシスナックに香辛料とチーズが振りかけてあります。味は正直微妙…。

②:マカロニとインゲン豆スープの素

KITANO製「マカロニとインゲン豆スープの素。ベーコン入り」。

ブラジルの食生活はイタリア移民の影響が強いため、マカロニだけでなく、ピザやパスタなどイタリア料理全般がブラジルの食生活に根付いているそう。そこに特産品である豆類とベーコンが加わります。

くわえて製品ブランドが「KITANO」ということで、日系メーカー?と思いたくなりますが、実は作っているのは日本ではハーゲンダッツでおなじみの米ゼネラル・ミルズ社。

 

③:自家製ハンバーガー。

美味!

店内で作ってくれたハンバーガー。とにかくデカくハンバーグも大容量。さすが肉の国。香辛料と甘さがミックスした不思議な味で美味しいです。

とにかく肉が厚い

写真ではわかりにくいですが、牛肉のハンバーグに加え、豚肉ハムもパンズに挟まれています。とかくボリューミー。

「モンテ ヤマザキ」の店名の通り、元々この店はヤマザキショップ系列店。とはいえ「ヤマザキ」らしさは、このシールにしか見つけることができません。

④:パッションフルーツ系「マラクジャ」ジュース

ブラジルではポピュラーな果物、パッションフルーツ「マラクジャ」のジュース。マラクジャ自体は酸味の強さが特徴ですが、このジュースは大量に入っている砂糖により、かなり甘い飲み物に。

⑤:ガラナ系炭酸飲料「ガラナ アンタルチカ」

ブラジルの飲み物と言えば、同国を原産とするガラナを原料にした「ガラナ系飲料」。日本でも北海道でおなじみ。ドクターペッパーに近いフルーツジュースのような味と香りが特徴である国内のガラナ飲料に比べ、今回飲んだのは無味無臭に近い味わい。

よく見ると日本語が入っていることからもわかるとおり、実は日本製。

 

八千代市にはこのショップのほか、ブラジル人の方向けのペンテコステ派教会があるなどして、独自のコミュニティーが切り開かれていました。