「マスコミの世論調査は携帯電話にかけない。だから若者の意見が反映されない」は本当か(世論調査のデマと注意点)

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「マスコミの世論調査は携帯電話にかけない。だから若者の意見が反映されない」は本当か(世論調査のデマと注意点)

 

「マスコミの世論調査は携帯電話にかけない。だから若者の意見が反映されない」は本当か

インターネット上に広く流通している話として、「マスコミの世論調査は携帯電話にかけない。だから若者の意見が反映されない」なる話があります。

あまりに多くの人々がさも当然のことのように話していますから、一見本当のことのように思ってしまいそうなもの。

しかしこれ、結論から言うと「マチガイ」です。

 

「世論調査」「意見調査」でも携帯電話にかけている

例えば日経リサーチのページには次のように記されています。

2016年4月からは、携帯電話も対象に調査を開始しました。固定電話がない家庭が増えてきたため、そのような人が調査対象からもれてしまうからです。携帯電話も固定電話と同様にRDD法で電話番号を抽出しているので、すべての携帯電話番号の中から無作為に抽出されます。

 

これは朝日新聞の世論調査も同じです。

携帯電話の普及で固定電話を持たない人が若い世代を中心に増えてきたため、2016年7月の全国世論調査から携帯電話に対しても電話をかける方式を導入しました

 

NHKももちろん同じです。

2016年12月より、電話法による全国世論調査の一部について、固定電話の電話番号に加え、携帯電話の番号にも電話をかけて調査を実施しています(「電話法(固定・携帯 RDD)調査」

 

なお世論調査には、毎月定期的に行われている内閣支持率など「意識調査」と、選挙情勢調査など「投票行動」の2種類があります。

 

注意点

ただ、携帯電話への世論調査については注意点が無いわけではありません。具体的には次のことがあげられます。

 

・携帯電話番号の性質上、地域を特定した調査には使えない

世論調査の電話調査で用いるRDD方法とは、「ランダム・デジット・ダイヤリング(Random Digit Dialing)」の略で、コンピューターで無作為に数字を組み合わせて番号を作り、電話をかけて調査するやり方。そのため、調査元(マスコミ)が調査相手の住所・年齢・氏名・職業・支持政党など個人情報を知っていることはありません。

そして携帯電話はその性質上、電話番号から地域が特定できません。

 

ですから、携帯電話への調査は全国を対象としたものに限られ、地域を特定した調査では使われないものとなります。

例えば、「内閣支持率調査」「政党支持率調査」「各種意識調査」などでは携帯電話にも掛けますが、各候補者の当選落選を予測する「衆院選情勢調査」「参院選情勢調査」など投票行動に関する調査では携帯電話には掛けません。

【ポイント:携帯電話に掛ける調査と掛けない調査】

・携帯電話に掛ける調査

内閣支持率調査

政党支持率調査

各種意識調査

 

・携帯電話に掛けない調査

衆院選情勢調査

参院選情勢調査

など投票行動に関する調査

 

◆◆◆

 

そのため、選挙情勢など投票行動に関する調査では予測精度が気になるところですが、現状ではあまり問題になっていません。

これは中日新聞の大栗正彦氏によれば、

・固定電話のカバー率がまだ高いこと(90%前後)

・固定電話層と携帯電話優先層で、意識差に統計的優位差がないこと(両者でそれほど考えが変わらない)

・若年層の投票率が低いため、投票行動の調査で仮に若者に聞けなくても実用上はあまり問題がないこと

などの理由があるからとのこと。

 

先の2017年衆院選の情勢調査を調べてみても、確かに各新聞社・通信社、90%ほどの当選精度と実に高い予測精度を誇っています。なお一番予測精度が高かったのは日本経済新聞でした。

 

 

参考:

大栗正彦(2013) 「ネット調査はRDD調査を補完できるか」『政策と調査 第5号』、世論・選挙調査研究大会記念号、p11~18

株式会社日経リサーチ「世論調査について」

朝日新聞「「RDD」方式とは」

NHKホームページ